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2023.12.4(最終改訂) 国立大学法人法の改正に反対する
国立大学法人法の改正に反対する
東京地区大学教職員組合協議会
2023.12.4(最終改訂)
第212回臨時国会において現在審議が行われている国立大学法人法改正法案(以下,改正法案)は、10月31日に突然閣議決定され、学長・教職員、学生など当事者にも知らされないなかで、同日衆議院の審議に回されたものである。
今回の改正法案は、1995(H7)年に制定されその後改正(2020(R2)年)された「科学技術・イノベーション基本法」、2003(H15)年に制定されその後改正(2021(R3)年)された「国立研究開発法人科学技術振興機構法」、2022(R4)に制定された「国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律」などの一連の法律の延長として検討されてきたものと思われ、「我が国の大学の国際競争力の強化及びイノベーションの創出」の方法として用意されたものと考えられる。
その基本的な考え方は、政府が用意した10兆円ファンドによる基金の創設と、その資金運用により作り出された研究費を国際卓越研究大学に指定された大学に配分し、国際競争力の強化及びイノベーションの創出をさせようとするものである。国際卓越研究大学に認定された大学には最高意思決定機関として「合議体」なるものの設置を義務づけることとなっており、合議体を設置するためには国立大学法人法の改正が必要とされていた。しかし、今回の改正法案では、国際卓越研究大学にのみ設置するとしていた合議体(改正法案では「運営方針会議」)を、一定規模の大学にまで拡大する内容となっている。しかも、運営方針会議の委員には文科大臣の承認を必要とし、さらに対象とする大学も国会での議論が不要な政令で定めるとしている。
2020年に日本学術会議委員の任命にあたり6名が内閣総理大臣により任命拒否された。それまで政府は、任命にあたり「政府が行うのは形式的任命にすぎません」と説明していたが、その約束はいとも簡単に覆された。しかも,政府は具体的な任命拒否の理由いまだに示していない。このような政府の対応の中にあっては、「運営方針会議委員」の任命が拒否されることは十分想定される。
大学外部の意思が強力に介入することになりかねない運営方針会議が最高意思決定機関となる組織体制のもとでは、大学の自主・自律のための自治機能が十分機能するとは考えられない。また、このような組織体制のもとで行われる研究には、特定の政治的・経済的意図が影響を及ぼす危うさすら感じざるを得ない。
以上より、東京地区大学教職員組合協議会は今回の改正法案に反対するものである。
参考資料:
学習会資料:20231107 国立大学法人法改正法案の問題性.pdf
文科省:
国立大学法人法の一部を改正する法律案
https://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/mext_00052.html
国立大学法人法の一部を改正する法律案(概要)
https://www.mext.go.jp/content/20231031-mxt_hourei-000032513_1.pdf
科学技術基本法等の改正に向けた検討状況
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/content/000033154.pdf
総合科学技術・イノベーション会議:科学技術・イノベーション創出の総合的な振興
に向けた科学技術基本法等の在り方について
https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/seidokadai/seidohokoku1-1.pdf
日本経済団体連合会:イノベーション創出に向けた国立大学の改革について
https://www.keidanren.or.jp/policy/2013/112_honbun.pdf